使用する文字盤と測定項目

走査法文字入力とは

 走査法文字入力とは,モニタ上に表示されたオンスクリーンキーボードを使って文字を入力する方法のひとつである.各キーの上をカーソルが自動的に走査しながら移動するので,利用者は任意のキーの上でスイッチやセンサを動作させ,カーソル位置のキーを選択する.
 今回は,横方向に走査しながら行(ア→カ→サ→・・)を選択し,選択された行列内で縦方向に走査を行って列(例えば,サ→シ→ス→・・)を選択する「2段階選択」を用いた.

使用する文字盤

・通常の文字盤 本実験では以下タイプAと呼ぶ.

・背景色の同じ付加文字盤付き文字盤 本実験では以下タイプBと呼ぶ.

・背景色の異なる付加文字盤付き文字盤 本実験では以下タイプCと呼ぶ.

付加文字盤とは

 日本語で使われる仮名文字の連鎖には統計的な偏りがある.そのため,先行する仮名文字が決定すると,入力される可能性の高い後続する文字を想定することができる.そこで,それらの出現頻度の高い仮名文字を50音表の最初の列より前に上位5つを配置し,これを付加文字盤と呼ぶこととする.  この付加文字盤を用いれば,次に入力する仮名文字が付加文字盤に含まれていた場合,選択までのステップが大幅に削減される可能性がある.

測定項目

・入力速度

 ある指定された原稿について,20分間に何文字入力できるかを計測する.

 

・メンタルワークロード

 NASA-TLXを用いて精神的負荷を計測する.
精神的負荷は,6つの尺度,WWL得点,およびAWWL得点より評価する.

 NASA-TLXとは,米国のNASAで開発された精神的負荷を6つの要素に分けて評価するものである.簡便な主観的ワークロード評価尺度として実験室でも実作業でも広く使われている.今回は,このNASA-TLXの日本語版を使用した.
 NASA-TLXを構成する6つの尺度は,以下となっている.

(1)知覚的要求
 どの程度の知的,知覚的活動(考える,決める,計算する,記憶する,見る,など)を必要とするか.課題がやさしいか難しいか,単純か複雑か,正確さが求められるかおおざっぱでよいか.
(2)身体的要求
 どの程度の身体的活動(押す,引く,回す,制御する,動き回る,など)を必要とするか.作業がラクかキツイか,ゆっくりできるかキビキビやらなければならないか,休み休みできるか働きづめか.
(3)タイムプレッシャー
 仕事のペースや課題が発生する頻度のために感じる時間的切迫感はどの程度か,ペースはゆっくりとして余裕があるものか,それとも速くて余裕のないものか.
(4)作業成績
 作業支持者(またはあなた自身)によって設定された課題の目標をどの程度達成できたと考えるか.目標の達成に関して自分の作業成績にどの程度満足しているか.
(5)努力
 作業成績のレベルを達成・維持するために,精神的・身体的にどの程度いっしょうけんめいに作業しなければならないか.
(6)フラストレーション
 作業中に,不安感,落胆,イライラ,ストレス,悩みをどの程度感じるか,あるいは逆に安心感,満足感,充足感,楽しさ,リラックスをどの程度感じるか.

 

・被験者による使いやすさの判断

 全ての実験終了後に,被験者に3つの文字盤について使いやすかった順をアンケートに記入してもらう.
 また,それと併せて各文字盤と全ての文字盤に対する自由記述欄と,異なる背景色を持つ付加文字盤付き文字盤に関して,付加文字盤と50音表とどちらを先に見たかというアンケートも行った.