結論

結論

 今回,タイプA(通常の文字盤)と,タイプB(同じ背景色を持つ付加文字盤付き文字盤),タイプC(異なる背景色を持つ付加文字盤付き文字盤)の3種類の文字盤について,入力速度,精神的負荷,利用者アンケートの3つの観点から比較し,背景色の異なる付加文字盤付き文字盤の優位性を検証する実験を行った.そこで,以下のようなことが分かった.
 まず,入力速度について.タイプAが最も入力文字数が少なく,タイプCが最も入力文字数が多い.物理的には同じだけの入力速度が望めるタイプBとタイプCであるが,今回タイプCの方が優位な結果が出たことは,背景色を変えることによって,被験者が付加文字盤から文字を探す反応速度が向上しているからといえる.
 次に,メンタルワークロードの比較について.タイプBのメンタルワークロードが最も高くなった.つまり,付加文字盤から色の識別なしに目的の文字を毎回探すことは被験者にとって大きな負担となっているといえる.
 また,タイプAとタイプCの比較結果であるが,タイプAの使い慣れた50音表のみの文字盤より,異なる背景色を持つ付加文字盤のついたタイプCの方が,メンタルワークロードが低くなっている.これは,走査法文字入力において,付加文字盤に目的の文字が含まれている場合,目的の文字までカーソルが走査するのを待つ必要が無いためであると考えられる.
 最後に,利用者アンケートについて.タイプCを最も使いやすいと評価した被験者は全体の半数となり,さらに,タイプCについて1位と2位を選んだ被験者を合計すると,被験者全体のうち8割以上となった.これは入力速度やメンタルワークロードの比較結果を裏付けるような結果である.  以上のことから,タイプCが他のものとの差は小さいものの,最も優れた文字盤であるということが分かった.
 今後はさらにタイプCの有効性を向上させるために,利用者アンケートで指摘を受けた点などの見直しを含め,さらなる検討が必要である.