実験の結果

通常の比較結果

・入力速度の比較結果

 18名×2回分の,のべ38人分の20分間に入力した仮名文字数の平均結果を見てみると,タイプAが最も入力文字数が少なく,タイプCが最も入力文字数が多いという結果となった.グラフで見てみると,タイプAからタイプBへの増え方に比べると,タイプBからタイプCへは大きく増えていることは大変興味深い結果となった.何故なら,タイプBとタイプCでは文字盤の配置は全く等しく,差は色の違いだけであるので,物理的には同じだけの入力速度が望めるはずである.しかし,今回タイプCの方が優位な結果が出たことは,背景色を変えることによって,被験者が付加文字盤から文字を探す反応速度が向上しているからといえるからである.

 

 

20分間に入力した仮名文字数2回分の平均値(誤入力は含まない)
 タイプAタイプBタイプC
平均値
164.8
167.4
171.3
標準偏差
18.2
18.5
17.8
 


20分間に入力した仮名文字数2回分の平均値(誤入力は含まない)
 

 

・メンタルワークロードの比較結果
 表および図より,タイプBのメンタルワークロードが最も高くなっていることは明らかである.つまり,付加文字盤から色の識別なしに目的の文字を毎回探すことは被験者にとって大きな負担となっているといえる.
 さらに今回着目して欲しい点は,タイプAとタイプCの比較結果である.タイプAは使い慣れた50音表のみの文字盤となっているので,メンタルワークロードが低くなっている.しかし,そのタイプAよりもさらにタイプCの方が,メンタルワークロードが低くなっているのである.これは,走査法文字入力において,付加文字盤に目的の文字が含まれている場合,目的の文字までカーソルが走査するのを待つ必要が無いためであると考えられる.

 

 

WWL得点
 タイプAタイプBタイプC
平均値
63.5
64.9
62.9
標準偏差
13.32
11.7
11.1
 


WWL得点

 

 

AWWL得点
 タイプAタイプBタイプC
平均値
64.58
66.1
63.93
標準偏差
14.4
12.7
11.1
 


AWWL得点 

 

・利用者アンケートの比較結果
 タイプA,タイプB,タイプCが,それぞれどの順で使いやすかったか順序付けをしてもらうアンケートを行った.その結果,表5-4,図5-4を参照すると,タイプCを最も使いやすいと評価した被験者は18名中9名と,全体の半数である.さらに,タイプCについて1位と2位を選んだ被験者を合計すると,18名中15名となり,被験者全体のうち8割以上ということになる.また,タイプBを最も使いにくいと評価した被験者は18名中8名で,人気が無いことが分かる.タイプAについては特殊な結果で,最も使いやすいと評価した被験者は18名中7名なのに対し,最も使いにくいと評価した被験者も18名中7名となっている.かなり好みが分かれていることが分かる.ちなみにこれは5.1.1および5.1.2にて説明した内容を裏付けるような結果である.

 

 

利用者アンケート
 タイプAタイプBタイプC
1位
7名
2名
9名
2位
4名
8名
6名
3位
7名
8名
3名


利用者アンケート

個人の平均的偏りを排除した比較結果

・個人の平均的偏りを排除した比較結果の計算方法

 上に記した比較結果では,被験者ごとの入力文字数およびメンタルワークロード・スコアの差が大きいので,3種類の文字盤の間の差では心許ない.そこで,被験者項目毎の平均値と,その項目に対して得られた値との差を算出することにより「個人の平均的偏りを排除した比較結果」を出した.その具体的な算出方法は以下の通りである.
 本来は18人分×2日分(2日目と3日目.1日目は練習)なので,のべ36人分のデータを取得しているが,今回は説明のためにαさんとβさんの2人分×2日分とし,説明する.
 下の図を追って説明する.@「αさんおよびβさんそれぞれの2日分,計6回におけるデータの平均値を算出」する.次に,A「算出された平均値をぴったり重なるようにし」,このときの平均値を0とする.B「このAの状態から平均値を計算する.」またC「このAの状態から最大値および最小値を削除」し,D「残った値での平均値を計算する」.

 

・入力速度の比較結果

 下の図のように,18名×2日ののべ36人分の入力速度を同じグラフにプロットすると,∧字型となる人や∨字型となる人など,個人間の差が大きくなっているが,それぞれの平均および,最大値と最小値を除く平均を算出してみると,上の図におけるBの算出値はタイプAが-3.03,タイプBが-2.44,タイプCが2.14となっており,上の図におけるDの算出値はタイプAが-2.92,タイプBが-2.18,タイプCが2.03となっている.つまり,タイプAやタイプBに比べ,タイプCが飛びぬけて入力文字数が多くなっているといえる.
 さらに,生のデータより平均を算出した5.1.1での入力文字数の比較ではタイプAが164.8,タイプBが167.4,タイプCが171.3となっていたので,5.2.1に記したような計算方法を使うことによりタイプCのその特徴は大きくなっている.


入力文字数(誤入力文字を除く)

 


入力文字数(誤入力文字を除く)の平均

 


入力文字数(誤入力文字を除く)のMAXとMINを除く平均