2006年度 卒業論文
『発声障害者の音声出力装置の語彙選択』
情報バリアフリー研究室 : 行岡 奈都子


 



目次
概要
研究の背景と目的
試作したシステムの特徴
評価実験
結論
リンク



 概要

 発声に障害を持つ人々は会話をするために音声出力装置を用いる。
 文字入力をするためのキーストロークの回数が多ければ、その分、入力時間が長くなる。
 本研究では、会話の内容別に言葉をカテゴリ分けして音声出力装置に語彙を登録することによって、
文字入力にかかる時間を短縮するシステムを提案し、評価した。
 研究の背景と目的

 
音声・言語・そしゃく機能に障害を持つ人々は、自ら発声することが困難であるため、手話や筆談や音声出力装置を用いてコミュニケーションをしている。
 そこで、近年、普及が著しく、外出先にも持ち歩く携帯電話型の音声衆力装置があれば便利になるだろうと考えた。
 音声出力装置にあらかじめ日常生活の中で使用頻度の高い単語、文章を登録しておき、ユーザが場面に応じて適当な言葉をボタン操作で選び、音声を出力するシステムを作成し、評価実験を行った。
 試作したシステムの特徴
 本システムの特徴は以下の3点である。


  (1)入力モードは、カテゴリ入力モード、ポケベル式入力モード、通常入力モードの3種類
  (2)カテゴリ入力モードにおいて、単語は場面ごとに分類して登録されている
  (3)カテゴリ入力モードの際、ディスプレイ上に表示された文字や文章は自動的に読み上げ


本研究では、打ち込みのキーストロークの回数を少しでも減らすことを考慮し、
単語や文章を場面ごとにカテゴリ分けして登録することによって、入力時間を短縮する音声出力装置を作成した。
本システムに登録する単語の決定方法は以下のように行った。
起床してから就寝するまでに自分が発声した言葉を全て書き留め、そのデータを1週間分集計し、
使用頻度の高い単語、低い単語に分類する。
使用頻度の高かった言葉をまとめ、アンケートをして、使用頻度を確認した。



操作の流れ
 評価実験


評価実験の概要

 あらかじめ用意した日常生活の会話14場面を、本システムを使って行う会話と、
予測変換機能(携帯電話のメール機能の予測変換機能)を使った文字入力による会話にかかる時間を
測定し比較する。


実験結果



 
会話の種類によって実験結果を4パターンに分類できた。




(1)登録済みの単語のみで会話
(2) 単語のみで会話(未登録の単語も含む)

(3)登録済みの単語を組み合わせて文章を作成して会話
【例】「ジュース」+「を飲みたい」

(4)未登録の単語と登録済みの単語を組み合わせて文章を作成し会話
【例】「林檎ジュース」{未登録}+「を飲みたい」




(1)は上図で黄色で表されたデータで単語のシステム未登録率は0%。
登録済みの単語のみ(未登録率0%)で会話を行う場合は,
カテゴリ分けして登録している本システムを使用することにより,
文字入力時間が大きく短縮でき,スムーズにコミュニケーションを取ることが可能となることが確認できた。


(2)は
ピンク色で表されたデータは,未登録の単語を使用して会話を行った場合である。
単語同士を組み合わせて文章を作成することは行っておらず,会話は単語単体で行われている。
未登録の単語を使用して会話を行う場合でも,
本システムを用いて会話を行う方が予測変換機能を用いた文字入力よりも入力速度が速いことが分かる。
ただし,単語は文章の一部として使用することはなく,全て単体で会話を行うものとする。


(3)は緑色で表されたデータは、登録済みの単語(単語のシステム未登録率0%)を組み合わせて文章を作成する場合である。
未登録率0%の単語を組み合わせて文章を作成し会話を行っている。
システム未登録率0%の単語を組み合わせて文章を作成し会話を行う場合でも,
予測変換機能を用いた文字入力よりも入力速度はやや速いことが分かる。


(4)は
青色で表されたデータは,未登録の単語と登録済みの単語を組み合わせて
文章を作成して会話を行う場合である。
未登録の単語を組み合わせて文章を作成して会話を行う場合は,
予測変換機能を用いて入力する方が,文字入力の所要時間が少なくなる。

 結論
 
カテゴリ分けして登録しているので、ランダムに単語が表示される予測変換機能よりも文字入力しやすい。

システムに未登録の単語を含む文章で会話をする際に、入力に時間がかかることが分かった。 

この問題点を改善するためには、ユーザ自身がよく使用する単語を調査し、語彙を登録し直す必要がある。
ユーザによって使用頻度の高い単語は異なる可能性があるので、その都度、ユーザに適した語彙をカスタマイズすることが望ましい。
 リンク


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