2007年度 卒業論文
『発声障害者ためのコミュニケーションエイドの試作』
情報バリアフリー研究室 : 飯田 雄介
目次
概要
研究の背景と目的
試作したシステムの特徴
評価実験
結論
リンク
概要
発声に障害を持つ人々は会話をするために音声出力装置を用いる。
文字入力をするためのキーストロークの回数が多ければ、その分、入力時間が長くなる。
本研究では、会話の内容別に言葉をカテゴリ分けして音声出力装置に語彙を登録することによって、
文字入力にかかる時間を短縮するシステムを提案し、評価した。
研究の背景と目的
音声・言語・そしゃく機能に障害を持つ人々は、自ら発声することが困難であるため、手話や筆談や音声出力装置を用いてコミュニケーションをしている。
そこで、近年、iPodやiPhoneをベースとしたパーソナルコンピュータとして注目されているiPadを用いた音声出力装置があれば、より便利なものができると考えた。
音声出力装置にあらかじめ日常生活の中で使用頻度の高い単語、文章を登録しておき、ユーザが場面に応じて適当な言葉をボタン操作で選び、音声を出力するシステムを作成し、評価実験を行った。
試作したシステムの特徴
本システムの特徴は以下の3点である。
(1)入力モードは、項目選択モードとひらがな直接入力入力モードの2種類
(2)項目選択モードにおいて、単語は種類ごとに分類して登録されている
(3)ディスプレイ上に表示された文字や文章は音声出力ボタンを押すことで読み上げられる
本研究では、打ち込みのキーストロークの回数を少しでも減らすことを考慮し、
単語や文章を場面ごとにカテゴリ分けして登録することによって、入力時間を短縮する音声出力装置を作成した。
本システムに登録する単語の決定方法は以下のように行った。
日常でよく使う単語を500個ほぼまで絞り込み、ゼミ研究員の意見を参考にすることで
一般的に使われる頻出単語を決定した。
使用頻度の高かった言葉をまとめ、アンケートをして、使用頻度を確認した。
操作の流れ
|
システム起動 |
評価実験
評価実験の概要
あらかじめ用意した日常生活の会話5場面を、本システムを使って行う登録済み単語とひらがな入力を混合させた会話と、
ひらがな入力のみの会話にかかる時間を
測定し比較する。
実験結果
(1) 登録済み単語のみで作成された会話
(2)
登録済みの単語とひらがな入力の組み合わせで作成された会話
【例】「ご飯」+「を」+「食べたい」
場面1:青色で表されたデータは、登録済みの単語率が90%だったときの文章作成時間を比較したものである。
このグラフは同じ会話内容でひらがなのみで作成された文章と,
登録済み単語とひらがなを混合して作成された文章の作成スピードを比較したグラフである。
文字入力時間が大きく短縮でき,スムーズにコミュニケーションを取ることが可能となることが確認できた。
場面2:ピンク色で表されたデータは,登録済みの単語率が60%だったときの文章作成時間を比較したものである。
登録済みの単語率が低い場合,ひらがなのみの文章作成に近づくため作成時間の差にあまり変化が見られなかった。
場面3:
黄色で表されたデータは、登録済み単語率が100%だったときの文章作成時間を比較したものである。
つまり登録済みの単語のみで文章作成したケースである。
文章作成スピードはひらがなのみの文章作成に比べて比較的速くなっている。
場面4:薄い緑色で表されたデータは、登録済みの単語率が90%だったときの文章作成時間を比較したものである。
この場合が一番作成時間が速くなっている。
これは,選択される登録済みの単語が定型文のものが多く、
他の場合に比べて文章作成時の操作量が少なかったためと考えられる。
場面5:茶色で表されたデータは、登録済みの単語率が50%だったときの文章作成時間を比較したものである。
つまり、登録済み単語とひらがな入力の割合が半々だったときのケースである。
場面2と同様に登録済みの単語率が低いのでひらがなのみの文章との文章作成時間に差はあまり見られなかった。
結論