概要

   今日、バリアフリー化が進みほとんどの施設でスロープや多目的トイレが設置されるなど、高齢者や障害者等にとって生活の幅が広がってきている。 下肢障害者にとってスロープやエレベーター、多目的トイレの設置状況や設置位置などは、安全で快適な生活を送るために必要不可欠な情報である。 また、健常者よりも移動に負荷がかかる下肢障害者にとって目的の場所まで安全かつスムーズにたどり着くことも安心した生活を送るためには欠かせないことである。
   そのことを踏まえ、本研究では車いすと杖の利用者を対象とした「下肢障害者のためのBKC移動経路案内システム」を構築した。 利用者に走行・歩行可能な段差などの条件を入力してもらうことで、利用者に合った最適経路を提供することができた。

背景

   今日、バリアフリー新法の施行により、段差などの障害物の解消や多目的トイレやスロープの設置も増え、高齢者や身体障害者等にとっても生活の幅が広がってきている。 立命館大学でも全建物にエレベーターが設置されているなど、全国でも屈指のバリアフリーな環境が整っており、校内でも車いすや杖の利用者を目にする。
   しかし、施設によってはエレベーターや多目的トイレ、スロープの設置場所が分かりづらくなっているところも多い。 そこで、立命館大学では学内の各施設のバリアフリー情報を掲載したバリアフリーマップが提供されている。 しかし、バリアフリーマップだけでは、どこにどのようなバリアフリーが設備されているのかは分かっても、どの経路が安全かつ利用者にとって最適かは分かりづらい。 例えば、傾斜や段差等は、障害を持たない人にとっては苦に感じないほどの障害物でも、車いすや杖を利用している人にとっては大きな障害に感じることがある。 また、立命館大学のような広い施設においては、移動経路によっては移動距離が大きく変わってくるため、車いすや杖の利用者にとっては移動距離自体が障害になりえることがある。
   このことから、本研究では車いすや杖の利用者が安全かつ最適に校内の施設を利用できるように、車いすや杖の利用者を前提とした「下肢障害者のためのBKC移動経路案内システム」の作成を行った。

システムの構成

   本システムは、入力部、経路探索部、出力部から構成されている。プログラムの流れが図1に示すとおりである。

図1 プログラム構成のフローチャート
図1 プログラム構成のフローチャート

 

データベース

 ■調査方法とノード取得方法

   調査範囲は、講義で使用する教室と多目的トイレに限定し、建物数は21戸でフロア数はのべ74フロアである。勾配や段差の有無、階段の手すりについて調査を行った。
調査結果を基に、windows上の画像作成ソフトであるペイントを用いて地図上に図2、図3のように建物間と建物内にそれぞれ取った。
取ったノードの地図上での座標を調べ、ノード間の距離を計測地で図って回った。

図2 建物間のノード
図2 建物間のノード

図3 建物内のノードの例
図3 建物内のノードの例

 ■データ入力方法

   データベースの管理にはWebデータベースで多く用いられているMySQLを使用した。 しかし、MySQLコマンドツールで大量のデータを入力するのは手間がかかってしまうため、
本システムではExcelでテーブルを作成してデータの入力を行い、そのデータをMySQLコマンドツールを用いてMySQLで作成したテーブルに取り込んだ。
   データベースに格納する情報は、
     ・ノード番号
     ・出発地・目的地になり得るかの情報
     ・地図上でのノードのx座標y座標
     ・接続するノード番号
     ・入力条件に合ったノード間の距離
   である。

結論

   今回、BKCキャンパス内で車いすと杖の利用者にとって安全かつ最適な移動経路を案内することを目的とした「下肢障害者のためのBKC移動経路案内システム」の作成をした。
   既存のBKCバリアフリーマップでは、スロープや障害者用トイレ、エレベーターの位置情報は詳しく提供されていなかった。
また、実際に調査をしてみるとマップには載っていないスロープや建物の出入り口などを見つけることができたなど、情報不足な部分が多かった。
   今回のシステムでは、調査を基にバリアフリーマップだけでは不十分な情報の提供を行うことができ、より利用者にとって安全かつ最適な移動経路を案内することができた。
また、入力・出力方法を工夫したため使いやすく、視覚的、直感的に分りやすいシステムを作成した。
   今回は、BKCキャンパス内に限定したため、勾配などは考慮に入れなかったが、勾配などの情報を加えることでさまざまな場所で応用することが可能になると考える。

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