■ 概要 本研究では、高齢者・身体障害者が少しでも外出しやすくなるための環境づくりの一環として、高齢者・身体障害者の乗り換えを考慮したJR大阪環状線内のJRと大阪市営地下鉄における乗り換え案内システムの作成を行った。 日頃、我々が利用する乗り換え案内システムは、健常者を対象としたものが多い。しかし、健常者を対象としたシステムでは、高齢者・身体障害者にとって乗り換えに要する時間や経路に無理が生じてしまう場合がある。そのため、高齢者・身体障害者が電車の乗り換えに余裕を持って移動できる、時間や経路を考えた案内システムが必要である。 そこで、本システムでは利用者の出発駅・到着駅と合わせて、利用者の身体条件を入力してもらうことにより、利用者に最適な乗り換え経路を提示する。また、それと同時に、利用駅のエレベーター、エスカレーターの有無などのバリアフリー情報も提供する。 本システムを利用して最短経路を出力した結果、現在エレベーターなどのバリアフリー施設が設置されていない駅や、車いすでの移動が困難な駅を考慮することができる結果が出力できるようになった。 なお、本研究は共同研究であり、筆者はデータベースの作成を担当し、共同研究者である、杉本愛子氏が、プログラムのコーディングを担当した。 ■ システムの構成 ここでは、本研究で作成したシステムについて説明する。 プログラムの詳細については、共同研究者である杉本愛子氏のページを参照されたい。
図1の各構成部について以下に説明する。 入力部:検索に必要な情報をユーザーに入力してもらい、その情報を取得する。 前処理部:入力部で得た情報を元にデータベースにアクセスし、経路探索に必要なデータを取得する。 経路探索部:前処理部で得たデータを元にダイクストラ法を用いて入力条件に合った 最短経路を算出する。 出力部:経路探索部で得られた最短経路を出力する。 ■ データベース ここでは、本研究で筆者が担当したデータベースの設計・管理について説明する。 本研究で対象となるデータは、以下に示す対象路線図の通り、JR大阪環状線内の10路線・86駅である。 調査方法は、実際に対象となる駅に行き、カウントメジャーや勾配計を用い、以下の点について調査した。 ●乗り換えに利用される駅名(路線名) ●各乗り継ぎにかかる移動時間、総移動時間 ●各駅間の乗車時間 ●バリアフリー情報(エレベーター、エスカレーターなどの設備の有無等) ●利用駅に関する備考(エレベーターの位置等) そして、それらのデータを元に、データベースを以下の図のように設計した。
まず、図2に示したように、経路検索に用いられるテーブルは3つある。 そのうち、直接的にデータを引き出すために全てのデータが保持されているテーブルがparentテーブルであり、parentテーブルへデータを挿入するためのリンクテーブルがchild1テーブルとchild2テーブルである。 また、結果出力時に用いられるテーブルがinfoテーブルであり、各駅のバリアフリー情報のデータが保持されている。 ■ 実行方法 ここでは、本研究で作成した乗り換え案内システムの実行方法を実行画面を用いて説明する。 実行画面の詳細画面については、手順ごとのリンクをクリックすれば、別窓で開く。 以下が、画面遷移フローである。
まず、システムを起動すると機能選択画面となる。 この機能選択画面において、 @:乗り換え案内を検索する A:各駅のバリアフリー情報を検索する のどちらかを選ぶことができる。 @を選んだ場合、乗換案内検索画面となり、そこから出発駅と目的駅を、それぞれキーボードを用いて入力するか、路線図の駅をクリックして自動的に入力欄に入力されるかのどちらかの方法で入力し、その下の身体条件を選択する。 その後、入力情報確認画面に移り、入力情報を確定する。 その後、乗り換え案内の検索結果を表示する乗換案内出力画面となる。 Aを選んだ場合、バリアフリー情報検索画面となり、任意の駅名を入力し、その後、駅のバリアフリー設備の情報を出力するバリアフリー情報出力画面となる。 ■ まとめ 本研究では、高齢者・身体障害者が少しでも外出しやすくなるための環境づくりの一環として、高齢者・身体障害者の乗り換えを考慮したJR大阪環状線内のJRと地下鉄における乗り換え案内システムの作成を行った。 本システムでは利用者の出発駅・到着駅と合わせて、利用者の身体条件を入力してもらうことにより、利用者に最適な乗り換え経路を提示する。また、それと同時に、利用駅のエレベーター、エスカレーターの有無などのバリアフリー情報も提供する。また、出力結果もよりシンプルにわかりやすく、入力方法もGUIを考慮した手法である。 本システムでは、JR大阪環状線内に限定しない駅のデータを増やすことも可能なデータベースの設計をすることにより、これからの拡張も可能なシステムである。 今後、駅の混雑度や今現在バリアフリー設備を設置するために工事が予定されている駅などを考慮していくことが課題となってくる。 本研究で作成したシステムは、身体条件ごとの最短経路を導くことはできるが、車椅子での乗り換え回数が増えてしまうようなことや、駅の混雑率を考慮できていない面もあり、必ずしも最適な経路とは言えない結果だと考えられる。 駅の混雑率については、本研究でも考慮しようと考えていたが、ラッシュなどの時間帯の限定や、各駅の利用者数、また、指標となるものを示すのが難しく、今後それらを解決できる手段を見つけることが最大の課題だと言える。 |