2009年度 卒業論文
  WiiRemoteを用いたメディアプレイヤ操作アプリケーションの試作
                                 情報バリアフリー研究室 橋本 哲
◆概要   ◆背景と目的   ◆試作したシステム   ◆まとめ   ◆リンク
 
概要

 本研究は、寝たきりの状態であるなどキーボードやマウスを思い通りに扱えずに情報を受け取ることができない障害者・高齢者を対象とし、パソコンを用いた数ある使用用途の中から特に、日常的に触れる機会の多い音楽メディアの操作について取り上げる。
 また、キーボードやマウスよりも直感的に操作しやすいデバイスとしてWiiRemoteを使用した。試作したアプリケーション、WiiRemoteを使用することで手を振る動作だけで音楽メディアの操作が可能である。
 障害者・高齢者でも気軽に音楽メディアに触れることができるようになり、より豊かな生活に一歩近づくことを目標とし、それを実現するアプリケーションの試作が本研究の概要である。

 
背景と目的

 総務省の統計によると2009年9月15日時点で日本の高齢者は2898万人となり、総人口に占める割合は22.7%に達した。これは人口比・割合共に過去最高を記録している。男女別では総男性人口の19.9%、総女性人口の25.4%で男性は5人に1人、女性は4人に1人が高齢者であるという統計になる[1]。そして、今や世界はドッグイヤー(歴1年で6〜7年分進む)と呼ばれるほど目覚ましい早さで高度情報化社会を迎えている。
しかし、企業や政府がいくら情報発信をしても、相手が受け取れなければ意味がない。これが情報化社会そのものを日本の総人口の4分の1近くに達する障害者・高齢者が受け取れるかたちにデザインすること、情報のユニバーサルデザインが必要とされる所以である。
 上記の通り、障害者・高齢者が情報(パソコン)を扱えるようにすることが必要となっている。しかし、手を器用に動かすことができない人にとってはキーボード・マウスを十分に操作することは難しい。こういった手を器用に動かすことができない障害者・高齢者が、パソコンを用いてより身近に音楽メディアに触れることのできる環境をつくることが本研究である。 そして、私たちが日常的に音楽メディアに関わっている「アラーム」、「PCを利用しての音楽メディア操作」が可能であれば、障害者・高齢者にとっても日常的に触れる機会を得ることができ、楽しむことが可能であると考え、本アプリケーションを試作した。

 
試作したシステム

 本研究で試作したアラーム機能付きメディアプレイヤ操作アプリケーションは、WiiRemoteの加速度センサ及びデジタル入力ボタンを用いて、アプリケーション本体で指定した日付、時刻に音楽メディアファイル(wave,mp3,wmaなど)を再生するアラーム機能、そしてWindows Media Player 11を起動し、各種操作をすることができる機能を持ったシステムである。

  

図1 アラーム機能設定画面

 カレンダーからアラームを再生する年月日、音源ファイルの指定、時刻の指定をそれぞれWiiRemoteの左右に振る動作で行う。操作は図1上部の操作説明部の通り、左右に振ることで項目の指定、+/−ボタンにより数値の上下やファイル選択の上下選択が可能、WiiRemoteを下に振り下ろすことで決定(Enter)となっている。
 全てを指定し、設定するのボタンを押すことで、指定した日時刻になると自動的にファイルの再生がはじまる。尚、最大7つのアラームを設定することが可能である。



図2 メディアプレイヤ画面

 メディアプレイヤ起動ボタンを押すことでWindowsMediaPlayer11が起動する。この状態からAボタンを押すことでプレイリスト内のランダム再生、右に振ることで次曲、左に振ることで前曲へプレイリスト内で割り込むことができる。
 また、前へWiiRemoteを突き出すことでイントロ再生・停止機能も利用することが可能である。この機能は、自動的にライブラリに登録されている曲を開始12秒のみを再生し次の曲へ進むという機能で、聞きたい曲が流れたところでイントロ機能を停止することで、画面を見ずに曲の選択ができる。

 
まとめ

 今回、寝たきりの障害者・高齢者がパソコンを用いて、より身近に音楽メディアに触れることのできる環境をつくることを目標に研究を進め、アプリケーションを試作した。  まちかどプロジェクトで行った実験では楽しかったと評価を頂けたのは大変嬉しかったが、アラームとして利用する、録音していたラジオ番組を聴くなど実際の生活に組み込めるレベルにはほど遠いという感想である。  誰に適しているのかという健常者を対象に行った実験では、実際に手を器用に動かすことができない状態の方以外、どのような方に適しているのかという点を確かめるために行い、音楽を楽しむという点に使用する目的を絞った場合はどちらのケースにも適していると感じた。特にイントロ再生は高評価で、寝たきり(目を瞑ったまま)で好きな音楽が選べるという点で評価して頂けた。  しかし、加速度センサ、操作性に関する問題点は両実験共に強く感じたことで、値の取り方の改善や、アプリケーションの操作性を高めることなどは当然必要である。こういった点、パソコンに不慣れな高齢者・障害者も利用することを常に考え、できる限り簡単な動作でアプリケーションを操作可能にし、誰もが音楽メディアを楽しめるシステムにすることで豊かな生活に一歩近づくことができるシステムとなるのではないだろうか。

 
リンク

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