視覚障害者のための音声出力機能付き触図を用いた地理教材の作成


Contents
1,研究の概要
2,ベースシステムについて
3,本研究で作成した教材
4,まとめ
5,リンク



1,研究の概要

 私たちは,視覚障害者は点字を使って情報を得ているものだと思っている.確かに視覚障害者は聴覚や触覚を使って情報を得る.だが実際に点字を触読できる視覚障害者は約1割程度である.したがって触図という視覚障害者のために作られた図も,その多くが点字を触読ができることを前提として作られているので,利用できないケースが多い.この現状に対して五島幸訓氏は,触図に音声案内とタッチパネルを合わせることで,点字を触読することができない視覚障害者でも触図を利用できるシステムを構築した.そして奥野貴行氏はこの五島幸訓氏の構築したシステムに対して,タッチパネルの改良や,よりわかりやすい触図を作成するなど,さらなる改良を加えた. 本研究ではシステムを引き継ぎ,盲学校の生徒や先生方から要望のあった日本地図の地理教材の開発に着手し,それらを数回にわたって評価してもらい,その評価結果に基づいて改良を随時加え,視覚障害者にとって必要な地理教材として作成した.


2,ベースシステムについて

本研究で利用するベースシステムでは,滋賀県の都市地図と鉄道地図の触図に対して音声案内が行われる.触図をタッチパネルにセットし,任意の箇所を押すと,その内容を音声案内する.





3,本研究で作成した教材

本研究で作成した教材の都道府県図に搭載されている情報は,都道府県名と県庁所在地,海の名称の3種類である. 作成した図は北海道・東北地方,関東地方,中部地方,近畿地方,中国・四国地方,九州地方の6種類である.ここでは例として近畿地方を図1に示す. なお都道府県の図の作成は,インターネットの白地図をパワーポイントに取り込み,その図を基にしてベースとなる日本地図をそれぞれ地方ごとに作成した.ここで作成したベースとなる図を基に,山脈河川図も作成した.


図1 近畿地方の都道府県図



本研究では都道府県図のすべての図に対して,それとは別に,山脈や河川,平野の情報を取り入れた山脈河川図を作成した.例として近畿地方の山脈河川図を図2に示す.この山脈河川図では都道府県の音声情報は除き,山脈と河川と平野の情報を取り入れている.

図2 近畿地方の山脈河川図



本研究で作成した図の情報を,全盲の人ではなく,弱視や晴眼の人がどの図に対して何の音声が割り当てられているのかが,一目で理解できる表を作成したので,ここで近畿地方の音声割り当て表を表1に示す.

表1 近畿地方の音声割り当て表





4,まとめ

 五島氏が構築した「点字が読めない視覚障害者でも使用できる音声出力機能付き触図システム」を奥野氏が触図,タッチパネル,専用ブラウザに改良を加え,視覚障害者向けのシステムとしてのさらに利便性を向上させた。 本研究ではそのシステムを利用することを前提に、視覚障害者が日本の都道府県の位置関係や山脈や河川、平野の名称や場所といった地理情報を、わかりやすく学べるような教材を作成した。 また、3回にわたって滋賀県立盲学校を訪問することにより、現場の声を取り入れると同時に、研究としての方向が逸れることなく改良を加え続けることができた。



5,リンク

●立命館大学

●立命館大学 情報理工学部