京都駅構内バリアフリーマップ(表示部)


目次
1,研究の概要
2,京都駅の3次元マップ
3,京都駅バリアフリーマップのシステム
4,配色
5,まとめ



1,研究の概要

京都駅はJR西日本、JR東海(新幹線)、近畿日本鉄道、京都市営交通局(地下鉄)の4つの駅からなり、各地から列車が停車する全国でも有数のターミナル駅である。 また、地上から地下までの複数階からなる複雑な駅でもある。 近年、旅客施設のバリアフリー化が進むなか、京都駅のバリアフリー状況は他の駅と比べても非常に整備されている。 しかし、それは各駅構内でのことであり、そこから他の交通機関へ移動する際エレベータが設置されてないことや、案内板だけでは目的地に辿り着けないなどの問題がある。 また、広い京都駅を利用する際、地図を使うことがあるが一般の地図は平面的であり複雑な構造を有する京都駅全体を把握することは難しい。
本研究では、京都駅の3次元マップの作成、及び利用者の移動手段に合わせた経路案内システムを構築した。

表示の特徴として以下を挙げる。
 ・京都駅を3次元の地図で表示する。
 ・平行移動、回転、拡大縮小など視点を自由に選択して表示する。
 ・利用者が見たい階層だけを選択して表示する。
 ・出発地から目的地までの最短経路のルートを地図上に表示する。
 ・移動経路を文章でも表示する。



2,京都駅の3次元マップ

JR京都駅はホームが9面、線路が14線からなり、全長は558mと日本一の長さである。 その他、新幹線は2面4線、近鉄は3面3線、地下鉄は1面2線からなる。 また、京都駅の北側にある中央口の外と、反対南側にある八条口の外にはそれぞれバス、タクシー乗り場があり一般利用だけでなく多くの観光客も利用している。
建物全体は地下と地上からなる6階層でできている。 その各階で今回の実験対象となる施設や経路を以下に示す(表1参照)。 対象範囲は各交通機関と隣接し、移動する際利用する施設や経路とする。

表1 京都駅の各階にある施設
階層 施設
3階(3F) 新幹線京都駅ホーム
2階(2F) JR京都駅西改札、ビッグカメラ前改札
【南北自由通路】
M[Middle]2階(M2F) 新幹線京都駅中央改札、乗換え改札、コンコース
近鉄京都駅改札、ホーム
1階(1F) JR京都駅中央改札、八条改札、ホーム
新幹線京都駅八条改札、八条東改札
バス、タクシー乗り場(北、南)
【ASTYROAD】
地下1階(B1) JR京都駅中央地下改札
地下2階(B2) JR京都駅地下東改札
地下鉄京都駅改札(中央1、2、北、南)
【PORTA】、【TheCUBE】


まず3次元で作成した京都駅マップの全体図を以下に示す(左図1参照)。 地上と地下の6階層からなる京都駅を3次元で作成することで全体を捉えやすくなった。 また、階段やエスカレータ、エレベータといった階移動する際必要な情報を表示することでそれぞれの階の繋がりがはっきりした。
次に詳細図を以下に示す(右図2参照)。 トイレやコンビニなどの施設情報はアイコンで表示し、通路やホーム番号などは文字テクスチャで表示している。

     
図1 京都駅3次元マップの全体図                    図2 京都駅3次元マップの詳細図




3,京都駅バリアフリーマップのシステム

システムを起動すると、以下の入力画面と出力画面が表示される(図3〜4参照)。 入力画面では階層別表示や経路案内する際に選択して使用できる。 階層別表示ではチェックボックスに表示したい階をチェックして「階層表示ボタン」をクリックすることで選択した階だけ表示される。 経路案内では入力画面の「出発地」と「目的地」をプルダウンメニューのリストから選択して「経路案内ボタン」をクリックすることで最短経路が表示される。 これら出発地と目的地は各改札やホームなど他の交通機関へ乗換えを行う際に起点となる場所を候補としている。

     
図3 入力画面1                             図4 出力画面1


例として、入力画面で出発地をJR中央改札口(外)、目的地を近鉄改札口に選択して、階段を利用できる条件で経路案内を行う(図 5〜6参照)。 出力画面に最短経路の赤いルートが表示される。 階層表示の選択で3階を非表示にすることで、ルート全体が表示できる。 また、入力画面の下のテキストボックスに目的地までの案内文が表示される。 この案内文を読むことで出発地や目的地の位置情報や、移動する際目印になるものが読み取れる。

     
図5 入力画面2                             図6 出力画面2


また、足の不自由な方が利用するために「階段の利用」を選択することができる。 階段利用が不可能とチェックボックスにチェックして経路案内を行うとエレベータを利用したルート案内に変わる(図7参照)。
その他、同一名で複数存在する施設を目的地にした場合に最短で行けるルートを検索する「カテゴリ検索」がある。 「カテゴリ検索」には、よく利用する「トイレ」「売店」「待合室」の3つから選択できる(図8参照)。
視点機能としては平行移動、回転、拡大縮小機能があり、利用者は自由に視点を動かすことができる。 マウスを使って操作ができ、右クリックしながらドラッグすることで平行移動、左クリックしながらドラッグすることで回転、マウスホイールを上にスクロールすると拡大、下にスクロールすると縮小できる。

     
図7 出力画面3                             図8 出力画面4




4,配色

京都駅3次元マップでは「通路」と「通路意外」の大きく2つに分けて色分けしている。 また、「通路」をそこから更に一般通路と各交通機関に分けて色分けをした。 各交通機関は広さや利用度から「JR」>「新幹線」>「近鉄」>「地下鉄」>「バス、タクシー」の順で優先度をつけて色分けをした。
色には大きく分けて「無彩色」と「有彩色」に分かれる。 無彩色は白、灰、黒系統に属する色味のない色のことで、明度だけを持つ。 有彩色は色相、彩度、明度を持ち、赤系統の暖かいと感じる色である「暖色系」と青系統の寒いと感じる色である「寒色系」とその中間色である「中性色」に更に分けることができる。 色の心理的効果として、無彩色より寒色系、寒色系より暖色系の色のほうが目立って見える特性がある。 また、暖色系や高明度、高彩度の色は前に飛び出して見え、逆に寒色系や低明度、低彩度の色は後退して見える特性がある。 以上のことから京都駅の配色では通路を暖色系や中性色で統一し、通路以外は寒色系や低明度(灰色)で統一した。
配色例を以下に示す(図9〜10参照)。 まず、配色例1は一般通路をクリーム色にして各交通機関はその色を中心とした暖色系や中性色で表した。 JRや新幹線といった広く利用度の高い交通機関から優先的に暖色系の色を付けて配色した。 また、地下に降りるほど明度を落として進退を表現している。 一般通路と交通機関の色の違いはそれほどないが全体的に統一して見やすいと考え採用した。
次に、配色例2は一般通路をクリーム色のままでその他交通機関の色を中性色にした。 統一感が少し欠けるため実際には採用しなかったが、配色例1と違って一般通路と交通機関の色の違いがはっきりしているため、目の不自由なお年寄りの方にとっては利用しやすいと考え試作した。

     
図9 配色例1                             図10 配色例2





5,まとめ

本システムでは3次元マップによる見やすい地図の提供と、経路案内システムによる利用者の移動手段に合わせた分かりやすい京都駅の案内を目標としてきた。 実行した結果、以下の知見を得た。
 ・平面図と比べ、それぞれの階層情報を把握することができ、施設情報も分散されたため見やすくなった
 ・エレベータやトイレなどの施設の詳細な位置情報をテクスチャで貼り付けることにより表現できた
 ・最短経路の赤いルートと案内文により、目的地までの詳しい情報が得られた

今後の課題として以下の点が挙げられる。
 ・カテゴリ検索の種類が3種類と少なかったので、他にも候補を増やす
 ・利用方法がパソコンでしか実行できないため、携帯電話などパソコン以外からの利用法
 ・利用者が自分の特性に合ったマップの配色を選択表示できる