2008年度 卒業論文 

「視覚障害者と健常者がともに楽しめるゲーム(タッチパネル版)」

情報バリアフリー研究室 B4 大西 聡司  

概要

 近年, IT化に伴い,晴眼者の生活水準が高まる一方,それに視覚障害者の生活水準がついていけていないのが現状である.よって晴眼者と視覚障害者の溝は縮まっているとは言えない状況である.そのようなことから本研究では,視覚障害者がより娯楽として遊ぶことができ,より視覚障害者の娯楽の幅を広げることを目的とした,2種類の人生ゲームを作成した.ひとつがPCのキー操作のみで行うキー操作版人生ゲームであり,もうひとつは,触図にした人生ゲームをタッチパネルに乗せ,触図上にあるマスやボタンを押すことによって操作を行うタッチパネル版人生ゲームである.私はタッチパネル操作版人生ゲームを担当し,人生ゲームのマスの形状から,スタート地点やゴール地点,分岐地点の判別,スタートからゴールまでの進行方向といった視覚的な情報を,早く入手することができる触図を作成し,システムの方では出目や位置把握,マスの内容といった内容的な情報をボタンやオブジェクトをクリックすることによって音声で出力されるシステムを作成した.そして,その2種類の人生ゲームのシステムや触図(タッチパネル版のみ)に関する理解しやすさ,面白さ,使いやすさを視覚障害者2名に評価して頂き,どちらのゲームが視覚障害者にとって遊びやすいゲームであるかを考察した.その結果,当初,面白さが最も重要な項目であると予想していたが,使いやすさや理解しやすさといった項目の方が,ストレスなくスムーズにゲームで遊ぶことができ,重要な項目であるというがわかった.そういったことから,操作範囲が狭く,記憶負担が少ないキー操作版人生ゲームの方が,娯楽としてとして現段階では優れていることがわかった.

      

研究の背景と目的

 平成18 7 1 日現在,全国の身体障害者数(在宅)は,3,483,000人と推計されており,その中で視覚障害者数310,000人いるとされていて,年々増加傾向にある.そういったことから,社会全体でより良い住みづくりの一環として様々なユニバーサルデザインがある最近では,ユニバーサルデザインの一環として,視覚障害者が使用する点字の併記が行われるようになり,代表的なものとして,缶ビールが上げられる.点字とは視覚障害者が触覚を使って読む字で,コミュニケーション手段として利用されている.しかし,実際はコミュニケーション手段として使用している視覚障害者は決して多くない.視覚障害者の約70%を占める重度視覚障害者(視覚障害の程度区分においての1級,2級者)の中の約2割しか点字を使用している視覚障害者はおらず,点字を使用している視覚障害者が少ないことがわかる.これは人生の半ばで,糖尿病や緑内障といった病気や,交通事故,労働災害などの事故によって視力を失った中途失明者が多数いるこが要因としてあげられている.その中でも特に,糖尿病の合併症患者数の増加が著しく,これからの高齢化社会を考慮すると,まだまだ増加することが確実とされている

ゲームのルールと基本構成

 ゲームの設定は晴眼者対視覚障害者の2人で遊ぶ人生ゲームとなっていて,稼いだ所持金によって勝敗を決める.マスには分岐地点があり,片方はマスの数が多くなりゴールまで遠くなるが所持金が増加するマスが多いという利点があるコース.一方はマスの数が少なくなりゴールまでの近くなるが所持金が減るマスが多いという欠点があるコース.よってこの分岐点でどちらのコースを選択するかで勝敗が大きく変わってくるし,先にゴールしたプレイヤーが遅くゴールしたプレイヤーの2倍の報奨金を得ることができることから,先にゴールしたプレイヤーが圧倒的に有利なゲームである.ゲームの基本構成と外観図は下図で示したようになっている                  

  

触図の作成      

  触図を作成する上で次のような前提条件が挙げられ、赤で示した項目 について特に考慮した.                                          

                              

    次のような触図が完成した.(検討過程に関しては卒論を参照)     

                                                                    <触図の完成図>               

比較研究の結果      

 最終的な比較評価としては,現段階ではタッチパネル版よりもキー操作版の方が記憶負担が少なく,捜査範囲が狭いということから,理解しやすさ,面白さ,使いやすさ全ての評価項目で上であると評価を頂いた.しかし,タッチパネル版人生ゲームの方がイメージしやすいという強みがあり、操作に慣れれば評価が変わる可能性があることもわかった.そういったことから、ゲームの操作性と慣れを向上させ、イメージを捉えやすいゲームの方が、視覚障害者と健常者がスムーズにゲームを行えることがわかった.      

リンク

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