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   ●研究の概要
   ●研究の背景と目的
   ●入力速度比較評価実験
   ●実験結果
   ●まとめ
   


  

     本研究では2つの実験を行った
   (1)高齢者が特殊キーボードを使うことで、ユーザビリティが向上するかをタイピング
      ソフトによる仮名入力速度比較とアンケートを行うことで評価する
   
   (2)標準キーボードと配列の同じ行別色付きキーボードに慣れることにより、後の標準
      キーボードの操作をタイピングソフトによる仮名入力速度比較を行い調査する

      


   



  
     
       現在、あらゆる分野においての高度情報化社会への急速な取り組みが進められてきている
    一方、情報化が進む中で、情報機器を利用できる人とできない人との間に生じるデジタル
    デバイド(情報化が生む格差)も益々拡大していっている。そのデジタルデバイドをなくす
    ことは、今後情報化が進める上で忘れてはならない重要な課題である
    20代の利用率は52.1%、30代は64.2%と高いのに対して、40代から減少していき、70代からは
    4%前後しかない。パソコン未利用者の利用しない理由としては、「必要がない」がもっとも
    多く、続いて「パソコン等の機器操作が困難」が挙げられる。また、高齢者はローマ字を習って
    いない人も存在し、高齢者にとっては仮名入力のほうが良いのではないかと考えた。高齢者に
    とって機器の操作が困難なことは、パソコンが使用できないことに繋がる重大な問題である
    そこで仮名入力でユーザに適したキーボードを選択することによって、高齢者の
    ユーザビリティを向上させることが本研究の目的である


       



  
   
   
●キーボード比較評価実験の概要
 
       被験者
       特殊キーボード
       タイピングソフトを用いた各キーボードの入力速度比較実験
       アンケート

     
   ユーザに適したキーボードを評価する

    ●被験者
                                                                            
                
年齢 人数
60代 2名
70代 1名
80代 2名

    ●キーボード

        〇標準キーボード
               −仮名文字入力で行う

        ○ナラコードキーボード
               −50音配列になっている

        ○行別色付きキーボード
               −行別に色が付いていて、仮名文字が大きく表示されている

        ○オンスクリーンキーボード
               −ディスプレイ上にキーボードを表示し、入力デバイスはマウスを使用


                                
                        ナラコードキーボード                  行別色付きキーボード               オンスクリーンキーボード


  ●比較評価プログラム

  キーボードの使いやすさを測る指針として入力速度に着眼した.そこで,Visual Basic6.0で試作した.


                                               


  ●実験手順


     1.タイピングソフトでの入力速度比較実験
      各キーボードでそれぞれ8回ずつの入力速度比較実験を行った
      標準型キーボード、ナラコードキーボード、行別色付きキーボード、
      オンスクリーンキーボードの4種類で実験を行った
      

     2.アンケート
      各キーボード使用後に使いやすさ、見やすさについてアンケートを
      実施した



    ●行別色付きキーボード実験の概要
 
       被験者
       特殊キーボード
       タイピングソフトを用いた各キーボードの入力速度比較実験
  
     
   行別色付きキーボードの有効性の検証

    ●被験者
                                                                            
                
年齢 人数
20代 8名
50代 2名
80代 2名

    ●キーボード

        〇標準キーボード
               −仮名文字入力で行う

        ○行別色付きキーボード
                 −行別に色が付いていて、仮名文字が大きく表示されている
    
                
    
  ●実験手順


  被験者には、1日2回、6日間キーボード比較実験を行った。1日目は標準キーボードによる
  タイピングソフトの結果により、タイピング能力が2グループAとBに均等になるように
  分ける。1つのグループには標準キーボードで2日目から5日間10回、もう1つのグループ
  では2日目から4日間8回行別色付きキーボードを用いて実験してもらい、5日目2回標準キー
  ボードで実験を行った。
     



  

     
下記に標準キーボードグループと行別色付きキーボードグループの6日間の結果を図として示す。
   実験前は、行別色付きキーボードを使用することにより、標準キーボードを使用するより効率的に
   上達が望めると考えていたが、実験結果は、図を見てもらえばわかるようにはっきりとした違いは
   現れず、行別色付キーボードを使用しても効率的に標準キーボードの操作が上達するわけではない
   と考えられる。 今回の実験の結果、行別色付きキーボードを使用することによる、標準キーボード
   に対する有効性は結果として現れなかったが、配列のわからない初めの頃は、標準キーボードより
   も行別色付きキーボードを使用したほうが結果は良くなることはわかった。これは行別に色がつい
   ていることにより速く文字を探すことができたと考えられる。



            



  

   キーボードの比較評価を通して、高齢者にとって標準キーボードは決して使いやすいものでない
    ことがわかった。最も入力速度の速かった行別色付きキーボードは、行別に色が付いていて配列
    がわかりやすかったものであり、次に結果の良かったナラコードキーボードは「あいうえお順」
    であるため配列がわかりやすかったものであった。結果から標準キーボードより高齢者向きの
    キーボードは多く存在することが明らかになった。本研究を通して、特に高齢者にとっては、
    配列がわかりやすいこと、文字が見やすいことがとても重要になってくることがわかった。
     高齢者にとって配列がわかりやすい、見やすい、操作しやすい、この3つが揃ってやっと高齢者
    向きのキーボードと言えるのではないかと考えられえる。
    しかし、行別色付きキーボード実験を行った結果、標準キーボードと配列が同じであるキーボード
    を普段使用していたとしても標準キーボードの操作はなかなか上達しないという結果が得られた。
    現在、高齢化社会が進む中、高度情報化社会への取り組みも急速に進められてきている。本研究
    の結果、標準キーボードは決して使いやすいとは言い切れないが、最も普及しているものは標準
    キーボードである。普段、適した入力機器を使用していても、標準キーボードに戻った場合、入
    力速度が遅くなることが考えられる。
     今後、パソコンユーザの様々な条件に適した入力機器を積極的に取り入れることによってデジタル
    ディバイドを解消する必要があるだろう。