2007年度
「高齢者のためのパソコン入門講座(改善と再評価)」
情報バリアフリー研究室 外園 和也


目次
1.概要
2.背景と目的
3.研究の流れ
4.改善点
5.再評価
6.評価結果
7.試作した「パソコン入門講座」
8.結論
9.リンク



1.概要
 

本研究は,高齢者にいかに分かりやすくパソコンを学習してもらうかを考察し,実際にパソコンを使ってもらうことで,私たちが生活の一部として利用しているように,高齢者にもパソコンを利用してもらうことを目指し,より良いパソコン学習の教材の提案を行う.実験では,昨年度情報バリアフリー研究室で試作された補足資料(操作集・虎の巻)を,既存のパソコン教材と併用して学習するときの有用性を調べ評価した.評価実験は2回行った.1回目実験では操作集・虎の巻のすべての項目について評価した.2回目の実験では1回目の実験結果をもとに改善した操作集について再評価した.そして新たに出てきた問題点を洗い出し改善することによって,補足資料(操作集・虎の巻)とパソコン教材を一体化させHTMLドキュメントを用いた「パソコン入門講座」を試作した.本論文では,2回目の評価実験と試作した「パソコン入門講座」を中心に述べる.


2.背景と目的
 
 現在、一家に一台パソコンがある時代になってきた.インターネットの利用もいまでは生活の一部になってきている.13-39歳まではインターネット利用率90%を超えているにもかかわらず,65歳以上のインターネット利用率はいまだに低い.また,高齢者が一人でパソコンを使いこなせるようになるのは難しく,学習中につまずきがあるのも事実である.そこで本研究は,高齢者が分りやすくパソコン学習してもらうために,より良いパソコン学習教材の提案を行うことを目的として,パソコン教材と補足資料(操作集・虎の巻)を使用した2回の評価実験を行った.

3.研究の流れ
 
本研究は,昨年度の研究を発展させたものである.昨年度の研究が進んだ範囲と,今年度行った研究の範囲を以下の図で示す.
本ホームページは青く囲まれた内容について述べる.オレンジで囲まれた範囲の内容は前田氏のホームページを参照されたい。



4. 改善点
 <操作集の改善点>
・電源ボタンのある位置を数パターン紹介する
・電源が入ると緑のランプが点くなどの説明を追加
・説明文は必ず箇条書きにする
・ドラック&ドロップを使用するときの具体的な例を画像で載せる
・クリックと記述するのではなく,左クリックか右クリックか必ず記述する

 <虎の巻の改善点>
・目次をつけて調べやすくする
・ページ番号を入れる
・全体的に説明が長いので,用語の由来などの説明は削る
・虎の巻に載っていない用語をつかってあるので,新しい用語に関しては追加する

5.再評価
目的 
 ・被験者を高齢者に限定し,高齢者の意見をもらう
 ・改善した操作集・虎の巻が,より有効なものになったか評価する

内容
 
・被験者に対してマンツーマン
 ・改善した操作集・虎の巻を対象にパソコン教材と比較し評価する
 ・つまずいた箇所,質問のあったところは必ずメモを取る

被験者
 ・滋賀県草津市桜ヶ丘団地の桜ヶ丘熟年会の方5名

評価基準
 
市販のパソコン教材の内容の学習内容についての補足説明として有効なものかをA+,A,B,Cの4段階で評価した
評価基準の内容は以下の表に示す



6.評価結果

操作集:改善前と後では大きな成果が見られなかったので,操作集に関してはまだまだ改善する必要があると考えられる



虎の巻:A評価の項目が増えたことで,虎の巻は分りやすいものになったといえる.またC評価の項目が大幅に減ったので,改善後の虎の巻は高齢者にとって使いやすいものになったと考えられる


7.試作した「パソコン入門講座」
 2回の評価実験の結果をもとにHTMLドキュメントで「パソコン入門講座」を試作した.HTMLドキュメントを使用することによって動画などを追加でき,市販されているパソコン教材よりもスムーズに学習できると考えられる.また「パソコン入門講座」の付属として紙媒体での使用書を作成した.内容は以下のとおりである.
使用書,「パソコン入門講座」は下のリンクをクリック.




使用書
・ノートパソコンの開け方
・電源マークの説明と電源の入れ方
・マウスの使い方
・「パソコン入門講座」の開き方と使い方




パソコン入門講座(学習範囲)




 [使用書]         [パソコン入門講座]


8.結論
本研究は,パソコン教材と補足資料(操作集・虎の巻)を実際に高齢者に使ってもらい,補足資料としての有用性を調べる評価実験を行った.また,評価結果をもとに「パソコン入門講座」をHTMLドキュメントで試作した.

 その結果,実験1で操作集にA+の評価が付いた項目が5個、虎の巻には1個という結果が出た.操作集に関しては,ある程度の有用性があったものの虎の巻はまだまだ改善が必要である。実験2では実験1の結果から改善した操作集・虎の巻についての評価をした.操作集に関しては,A+A評価が1つ増えた.実験@の結果にくらべて大きな成果が挙がらなかったので,まだまだ改善が必要であると考えられる.虎の巻に関しては,A評価が6つ増え,C評価が15も減ったので改善した虎の巻は高齢者にとって,使いやすい補足資料であると言える.

 また実験@Aの結果と被験者の意見から,HTMLドキュメントを用いた「パソコン入門講座」を試作することができた.画像や文章での説明に動画をプラスすることによって,高齢者がパソコン学習する上で非常に使いやすいパソコン教材の提案ができたのではないかと思う.

 今後の課題としては,実際に「パソコン入門講座」が高齢者にとって分りやすいパソコン教材であるか評価していないので,評価する必要がある.また「パソコン入門講座」に音声をつけるとより一層,分りやすいパソコン教材になるのではないかと考える
 



リンク
立命館大学
立命館大学 情報理工学部
情報バリアフリー研究室 (教員)