2006年 卒業論文
  高齢者の読み取りやすい字幕表示方式の調査
                                 情報バリアフリー研究室 上村 輔
●概要   ●背景と目的   ●字幕表示システム   ●読み取り時間測定実験について   ●読み取り時間測定結果
●アンケート結果   ●まとめ   ●リンク
 
概要

 本研究では、高齢者の字幕の読み取り時間の測定と字幕に関するアンケートを行い、高齢者の読み取りやすい字幕表示方式について調査を行った。
 字幕の読み取り時間測定実験では、テレビ上に作成した字幕を映像に載せて出力する字幕表示システムを試作し、また読み取り時間が正確に測定できるようにUSB接続のボタンを試作した。
 字幕に関するアンケート調査では、実際に放送されているニュース番組を被験者に見せ、番組上に表示される字幕に関するアンケートを取った。また字幕表示システムを用いて被験者の意見を聞きながら、字幕を作成・表示していき同様にアンケートを取った。
 
背景と目的

 テレビ番組に表示される字幕を見る際に、読み取り速度の低下が原因で字幕が表示されている時間内に読みきることが出来ない、または字幕自体が読みづらいといった高齢者の意見が最近とても多くなってきている。また字幕を作成する放送局側に統一した規格・基準が無いため、番組によっては高齢者にとって、非常に読みにくいものも数多く存在している。そこで本研究では高齢者が字幕のどのような点に日ごろ不満を持っているか、字幕のどのような要素が高齢者の読み取りを困難にしているかを調査することを目的とした。
 
字幕表示システム

 本研究で試作したシステムは高齢者の読み取りやすい字幕表示について調査するために、以下の点を考慮して作成した。
  1.高齢者の意見を聞きながら字幕を作成し画面上に表示することが出来る
  2.字幕の読み取り時間を測定することが出来る
 以下に字幕付加例を示す。

   
                 図1:白文字                              図2:白文字/黒背景色


図3:字幕表示領域有り

 
読み取り時間測定実験について

 読み取り時間測定実験では、以下に示す4つの項目を考慮に入れた字幕付き映像をい用いて読み取り時間を測定した。
  @表示位置・・・上下左右の4箇所
  A表示方式・・・白文字(図1参照)、白文字/黒背景色(図2参照)、字幕表示領域有り(図3参照)の3パターン
  B背景の映像の動きの量・・・多い映像、少ない映像の2パターン
  C字幕テキスト・・・映像にあった字幕を文字数・漢字割合などを考慮して作成
 

読み取り時間測定結果



図4:白文字の読み取り時間と下/少ないを基準とした標準偏差



図5:白文字/黒背景色の読み取り時間と下/少ないを基準とした標準偏差

                   図6:字幕表示領域有りの読み取り時間と下/少ないを基準とした標準偏差

 表示方式毎の読み取り時間測定結果を示す。縦軸は被験者の平均読み取り時間で、横軸は実験パターンをあらわしている。また、下/少ないの実験パターンを基準とした標準偏差をグラフ上に示した。
 読み取り時間は全体的に高齢者のほうが長く、加齢による読み取り速度の低下が確認できた。
 表示位置別では、全体的に下部が短く、左部が長い傾向にある。
 表示方式別では、読み取り時間は白文字の字幕が、白/黒背景色、字幕表示領域有りの場合に比べて若干長く、また白/黒背景色に比べ、字幕表示領域有りは読み取り時間の差が少ない。
 背景の映像の動きの量では、白文字では動きの量が少ない方が読み取り時間が若干短い。白/黒背景色は動きの少ないほうが白文字ほどではないが若干少なく、また字幕表示領域が有る場合は違いは見られなかった。

 

アンケート結果

 字幕に関するアンケート調査の結果の一部を紹介する。
 

                               図7:アンケート結果
                       
 どの表示方式が見やすいかというアンケートには、7割の被験者が字幕表示領域が有る場合が見やすいと回答した。また、字幕表示領域については、5割の被験者がある方が良いと回答した。アンケート結果から字幕表示領域の有効性が確認できた。
 
まとめ

 字幕読み取り時間測定実験と、アンケート調査から字幕表示領域の有効性が確認できた。また、字幕表示領域が無い表示方式でも、アンケート結果などで得られた高齢者の意見を考慮した字幕作成を放送局側がすることで、読み取り時の負担を減らす事が十分可能であると考えられる。今後、高齢者のアンケート結果や意見を基にした字幕の規格・基準の確立が望まれる。
 
リンク

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