2006年度 卒業論文
   「障害者のための高速道路SA・PA案内システム」   
情報バリアフリー研究室 柴田 貴美

 

 
Contents
概要 背景と目的 作成したシステム 実行画面 まとめ

 
 概要

 
    近年,社会の高齢化に伴い駅やデパート,公共施設,コンビニなどの様々な建物のバリアフリー化が進んでおり,高齢者や車椅子を利用される方にとって住みやすい環境が整いつつある.さらに,インターネットの普及により様々な建物のバリアフリー情報を事前に知ることが可能となっている.しかし,高速道路におけるサービスエリア・パーキングエリア(以下,SAPA)でのバリアフリー情報を十分に提供しているものは少なく,障害者が不安に感じたまま高速道路を利用せざるを得ない.そこで,障害者がSAPAを利用する上で必要とする情報をまとめ,Webを通じてSAPAの詳細情報を得ることが出来る「障害者のための高速道路SAPA案内システム」を試作した.試作するシステムは,障害者が求める条件により適したSAPAを案内する.条件として障害者のニーズを考慮し障害者用駐車場に駐車しやすいや障害者用トイレまでが近いなど4種類の条件で検索する.それぞれの条件で必要となるSAPAの詳細情報に重み係数をつけ,それらの積の和を用いて適したSAPAをランキング形式で表示するようにした.

 

背景と目的

 
  近年,ICチップを搭載の会員カードやクレジットカードが普及している.中でも高速道路で料金所を通過する際,自動料金収受システム(ETC)を利用する運転手が増えている.道路システム高度化推進機構(ORSE)の統計によると,自動料金収受システム(ETC)車載器のセットアップ(搭載時の初期情報書き込み)件数は20013月のサービス開始から49カ月後の20061月に1000万件に到達,20071月現在は1500万件と昨年比は150%となり急激な増加を遂げている.さらに,ETCの障害者割引や福祉車両数の増加により高速道路を利用する障害者も増加していると考えられる.

インターネットの普及により,自宅で高速道路の利用計画を立てることが容易になった.出発地と目的地のインターチェンジ(以下,IC)を指定することで,料金や予測経過時間,距離を知ることが可能である

しかし,これらのシステムは健常者向けのシステムが多く,SAPAにおける障害者駐車場の台数や大きさ,障害者用トイレの個数や大きさ,スロープの傾斜など車椅子を利用する障害者にとっての情報が掲載されていない場合が多い.そこで,先ほどあげた障害者が必要とする情報を追加することによって,障害者が高速道路を利用するときに感じる不安が解消され,障害者が安心かつ気軽に高速道路を利用することができるようになる.さらに障害者の活動範囲を広げることができると思われる.

 
 作成したシステム
 
  システムの流れ

 作成したシステムには,2つの機能がある.メイン機能である出発・到着IC指定検索と登録SA・PA一覧の表示機能である.出発・到着IC指定検索は,出発・到着ICとSA・PAの詳細条件を指定してもらい,条件にあったSA・PAをランキング形式で案内する.登録SA・PA一覧の表示は,データベースに登録されているSA・PA情報を上り方面・下り方面に分けて表示する.

 システムの特徴

  出発・到着IC指定検索では
   ・指定した出発・到着IC間にあるSA・PAの表示
   ・障害者用施設の有無やその充実度を基準としてSA・PAをランキング表示
   ・駐車場・トイレなどの詳細情報の表示

  登録SA・PA一覧の表示では
   ・ランキングや目的地に関係なく、ユーザが知りたいSA・PAの詳細情報を見ることが可能
   ・出発・到着IC指定検索と同様に駐車場・トイレなどの詳細情報を表示
 
 実行画面




                                  




  出発・到着IC指定検索では,ユーザに出発ICと到着ICの指定・求める条件の指定・天候,時間帯の指定・オプションの4つの質問に答えていただきます.指定に不備がある場合,エラーを表示させる.正しく指定された場合,検索結果画面を表示する.
 検索結果画面では,指定した出発ICと到着ICの間にあるSA・PAを表示する.さらに,指定された条件を基に算出したランキングを表示する.
 検索結果画面より,詳細情報を表示したいSA・PAを選択すると指定したSA・PAの詳細情報表示画面を表示する.詳細情報表示画面では,障害者用駐車場や障害者用トイレなどの詳細情報を載せている.詳細情報としては,障害者用駐車場なら実地調査で得られたデータと画像,障害者用トイレも同様にデータと画像を表示させている.障害者用駐車場とトイレの他にトイレの手すりの使用方法も掲載している.トイレの手すりの使用方法を掲載する理由としては,障害者用トイレの手すりには様々なタイプがあり,障害者が手すりの使用方法を理解できず,混乱したり必要以上に時間がかかったりするためである.


 
 まとめ

  今回,高速道路を利用する障害者がSA・PAを利用する際の不安を解消することを目的として「障害者のためのSA・PA案内システム」を試作した.

  このシステムは,各SAPAで障害者用駐車場や障害者用トイレ,スロープなどの障害者が利用するすべての施設における調査の結果を表示する.そうすることによって,間違った改善など利用してみないと分からない情報を障害者が事前に知ることができる.さらに,障害者用駐車場に駐車しやすいや障害者用トイレが近いなどの条件を指定してもらい,その条件にあったSAPAをランキング表示することで障害者が求めるニーズに応じたSAPA案内する.

 このシステムは,障害者のニーズに応えるためのシステムである.SAPAにはまだ問題があり,その問題を知らせる必要がある.すべてのSAPAのバリアフリーが整えばどのSAPAを利用しても安心のはずである.しかし,その基準がまだ存在していない.そこで,このシステムがSAPAの問題点をまとめ,SAPAを総合的に評価する基準を作成する際の参考になれば間違った改善を無くし,障害者にとって使いやすいSAPAとなると考えられる.

 
 リンク
 
  ●立命館大学
  
  ●立命館大学 情報理工学部

  ●情報バリアフリー研究室(教員)

  ●情報バリアフリー研究室(学生)