日本では高齢化が進み,移動に不自由を感じる人も一挙に増え,今後は高齢化による障害者の増加も予測される.このため福祉車両による技術的支援が不可欠となっている.

車両補助装置は利用者の能力や状態,環境に合った装置でなければ効果が薄く,場合によっては逆効果になってしまう場合もある.車両補助装置の種類は多岐に亘っているにも拘わらず,情報が少なく馴染みが薄い装置が多い.そのため,利用者に適合した装置を選ぶことが難しい.

本研究では検索方法を質問形式にし,利用者の能力や環境について質問することによりそれらを考慮した検索ができるシステムを構築した.本研究によって,手軽に利用者に適合した車両補助装置を案内でき,尚且つWebブラウザを利用することで,幅広い利用者が使用できるようにすることができたと考えられる.








 

  日本の身体障害者数は約343万人.そのうち,在宅の肢体不自由者は約175万人と推計されている.つまり,身体障害者の約半数が身体の運動機能に障害のある人たちである.彼らの中には,交通事故やスポーツ事故,あるいは脳溢血などによって後天的に障害を負った人も少なくないだろう.そうした人々が生活を楽しみ,意欲的に社会に参加するには,好きなときに自由に,そして快適に移動できる手段が必要である.

   身体障害者の人が自動車の運転免許を取得するケースも着実に増えている.1995年に約20万件だった条件付自動車免許の付与件数が,2003年には約243,000件に達している[3].障害者自らが運転できる車の必要性は,ますます高まってきているのである.

 「福祉車両」は移動に支障を感じている人だけでなく,介護をよりスムーズに行いたいと考えている人にも,快適で安全な移動の手段を提供する.

車両補助装置は利用者の能力に合った装置でなければ効果が薄くなってしまう場合もある.車両補助装置の種類は多岐に亘っているにも拘わらず,情報が少なく馴染みが薄い装置が多い.そのため,利用者に適合した車両補助装置を選ぶことが難しい.また,様々なメーカーから多くの装置が販売されているが,それらの情報を統一に扱ったシステムがないという問題がある.
 
本研究によって,手軽に利用者に適合した車両補助装置を案内できるようにし,尚且つWebブラウザを利用することで,幅広い利用者が使用できるようにすることを目的とする.本研究で自分にはどういった車両補助装置が合っているのかを把握することによって,自分に適合した車両補助装置を探し出す助けになると考えられる.






  本システムはWeブラウザを用いて,車両補助装置を案内するシステムである.ユーザ側においてWebブラウザを用い,画面上に表示されている質問項目で自分に該当する答えに対してチェックをすることで,自分に適した車両補助装置の情報を取得することができる.






  本システムで案内する車両補助装置をいくつかカテゴリ別に例を挙げ,説明する.

      片手障害



     片足障害



     両下肢障害






   システムの構成をDFD( Data Flow Diagram ) で示す.

       ユーザ


       管理者


 

システムはユーザ側では検索部,結果一覧表示部から構成されている.管理者側の登録部では,装置の登録データ作成部,DB登録部,完了画面表示部から構成され,編集,削除部では装置一覧表示部,DB更新部から構成されている.
 

ユーザ側

検索条件指定部では,web上で利用者に合った条件を入力,いくつかの質問に答えてもらい,エラーの無い場合はMySQLの構文に変換し,データベースに接続した後にデータを送信する.

結果一覧出力部では受信したデータをもとに検索を行い,条件に合った装置を表示する.表示項目は写真,カテゴリ,装置名,機能,価格,発売元となっている.また表示された写真をクリックすることで拡大して表示することができる.

管理者側

・登録部

データベース登録部では,入力したデータに問題がない場合は確認画面を表示させ,MySQLの構文に変換し,データベースに接続した後にデータを送信する.登録が完了した場合は完了画面を表示する.

・編集・削除部

装置一覧表示部で登録してある装置を全て表示する.各データごとに編集ボタン,削除ボタンを設けており,それぞれをクリックすることによって編集,削除することができる.

データベース更新部では入力したデータに問題がない場合は確認画面を表示させ,MySQLの構文に変換し,データベースに接続した後にデータを送信する.更新完了時には完了画面が表示される.








質問の回答によって検索された装置の画像と情報が表示される.画像をクリックすると拡大する.






本研究では,利用者に適合した車両補助装置を見つけ出すのが困難であるという問題点を解決するために,PHPMySQLにより「高齢者・障害者用車両補助装置案内システム」を作成した.現在,様々なメーカーから多くの装置が販売されているが,それらの情報を統一に扱ったシステムがない為,検索方法が難しく,自分に合った機器を探すのが困難であるのに対して,本システムでは,検索を質問形式で行うことによって,より簡単に検索でき,より信頼性の高いシステムを提供することができた.

よりユーザに適した車両補助装置が案内されるよう,数々の資料,文献から質問項目を選定した.案内する車両補助装置の幅を広げることで,よりユーザにとって使う価値のあるシステムになると考えられる.

現段階では,案内している数が少ないことや,説明,質問が完璧でないことから,完璧なシステムとは言えないので,今後さらに改善して使いやすいシステムにする必要がある.利用者および製造業者からの意見を頂き,内容をさらに充実し,使用事例や障害運転者のための運転補助装置以外の各種の支援策も案内できるようにする必要がある.このシステム利用した人が,今まで困難だと思われていた装置選択が簡単になり,ユーザが必要とする車両補助装置を案内できることを祈っている.そして知らず知らずに狭くなっていた生活領域を,少しでも拡げ,豊かで積極的な日々が送ることができることを願っている.





    立命館大学

   立命館大学 情報理工学部

   情報バリアフリー研究室(教員)

     情報バリアフリー研究室(学生)