目次
 ●概要
 ●実験内容
 ●実験結果
 ●メタファについて
 ●用語解説例
 ●まとめ
 ●リンク

 
 ●概要
  本研究では,実際に高齢者の方にパソコンについて学んでもらい,そこで高齢者がつまずく原因を明らかにすることにより,高齢者にパソコ
 ンをよりスムーズに利用してもらいパソコンを利用する事によって色々な情報を入手し,様々な人々と交流できるという新しい趣味や生きがい
 としてのパソコンを提案し,高齢者の活動の場を広げていくことを目的とする.
  調査実験は,被験者の高齢者はパソコン初心者の女性を対象とし、高齢者6名,2時間の実験を6回行いつまずく点を調べた.実験環境は
 1対1の形式でパソコンを学び,ICレコーダ,メモ,チェックテスト等から被験者がつまずいた点を調査し,パソコン操作のつまずきの原因を明
 らかにしその解決策提案を行った.

 
 ●実験内容
  本実験の目標は,インターネット学習である.しかし被験者はパソコン初心者ということなので,パソコンの基本から学んでもらう.初めはパ
 ソコンで何ができるのか,電源の入れ方等,パソコンの基本から学んでもらった.また,操作困難が予想されるキーボード操作にあたっては2
 回分の学習機会を設けた.目標であるインターネットは,最後の2回学習してもらい,最終的に被験者自らキーワード検索ができるところまで
 学習してもらった.

  実験に流れ

  @      顔合わせ
       はじめに被験者データをアンケートで取る.
             ↓
  A      実際にパソコンについて学ぶ.(1回目)
       ・学習後にその回の復習として「理解度チェックテスト」を実施.
             ↓
  B   実際にパソコンについて学ぶ.(2回目)
       ・はじめに前回学習した内容を覚えているか確認するため,前回の学習後にした「理解度チェックテスト」を実施.
       ・学習後,その回の復習として「理解度チェックテスト」を実施.
        (理解度チェックテストは付録として添付)
             ↓
  C   「B」と同じ流れで学習.(3〜6回目)
             ↓
  D   実験の協力のお礼と挨拶
 


 ●実験結果
  実験で被験者6名分のデータをとった.対象である高齢者の特徴は若者に比べると運動的なハンディキャップが少し感じとることができ,記
 憶力低下が要因と思われる点も多数見ることができる.個人差はあるが,運動的な技能を修得するためには,若者と比較して非常に多くの
 労力と時間が必要とされる.パソコンを使用するにあたっては,マウスとキーボードという入力装置の利用が避けられない.また,用語がわか
 りづらく操作が不安など,知的な問題もある.今回の実験では高齢者が「操作でつまずいた点」と「概念でつまずいた点」を杉山麻子と山本恵
 理子で分担し考えていく.まず概念でつまずいた点を以下に挙げる.
  高齢者がつまずいた点を見ると,一度覚えたことを忘れる,操作方法を思い出せない,パソコン用語を覚えられない等,記憶力低下に伴う
 要因が挙げられる.パソコン用語が理解しづらい,という点はパソコンのメタファと被験者である高齢者との関係に問題があると考えられる.
 高齢者は若者に比べると身近でカタカナ(外来語)を使う頻度が低い.パソコン用語はほとんどがカタカナ(外来語)なので,高齢者にとっては
 親しみにくい言葉だと考えられる.このカタカナというのは実はメタファなのである.

 
 ●メタファについて

  メタファとは比喩のことである.わかりやすく言うとある事柄を他の事柄を当して理解することである.
 例えば,DVD を知らない人につぎのようにメタファを用いて説明ができる.「DVD+RW のディスクはビデオテープのようだ」.ここでメタファを成 
 立させている共通性はDVDの再生,書き込み,書き換え機能とビデオテープの再生,録画,重ねて録画機能の対応関係である.このようにメ
 タファえお使って説明することで理解が安易になる.誰もが共有している単純なメタファによる置き換え理解が初学者にとって効果的なのであ 
 る.

 コンピュータの設計では機械が行う処理を人々が日常生活の中で慣れ親しんでいるものに置き換え,比喩的に表現している.
 また,上で述べたように.初学者にとってメタファによる置き換え理解が,非常に効果的な場合が多い.できる限り誰もが共有している単純な
 メタファに,コンピュータの諸動作を置き換えることが重要なのである.現在パソコンで使用されている用語はメタファです.ファイル,フォル
 ダ,ウィンドウ等,これらのほとんどの用語はメタファであり,メタファの外来語である.若い世代では普段の生活から外来語を使用しているこ
 とから,パソコンを学ぶにあたってメタファによる置き換え理解が,非常に効果的な場合が多いと考えられる.しかし,そのメタファというのは
 外来語であり,高齢者にとって分かりづらい用語である.
  現在使われているパソコン用語は外来語を身近に使用する世代向けのメタファであり,高齢者向けのメタファではない.そもそもパソコン用
 語にはカタカナが多く,その意味すら想像できないものが多くある.そこで,パソコン用語を覚える過程で,一時的にパソコンのメタファ用語を
 高齢者にとってわかりやすい用語で解説し,高齢者にパソコンをよりスムーズに理解してもらいと考えた.

 
 ●用語解説例


  <ウィンドウ>
  ウィンドウというのは窓である.
  ウィンドウというのは,パソコンの操作画面内にそれぞれ独立した小さな画面をいう.その中に画像や文書が表示される.画面内にまた画面
 があると,画面の中にまるで窓のように見える.このメタファから,画面内に現れる画面を窓=ウィンドウという.
  また「ウィンドウを閉じる」とは,デスクトップを机の上と考えたとき,作業するため机の上に一つの書類を開く.これはパソコン画面の中に一
 つ画面が出てきたことになる.また,机の上に書類を2つ広げ,写真を1枚広げる=パソコンの画面に3つのウィンドウが開かれる.ということ
 になる.ウィンドウは作業の数だけ表示される.作業を終えたら書類を閉じる.このように「ウィンドウを閉じる」とは,机の上に広げていた書類
 類を閉じる,を表すメタファである.「ウィンドウを閉じる」以外には,「ウィンドウを終了させる」,「ウィンドウを消す」と同じ意味.ウィンドウを消 
 す時は右上の×ボタンをクリックする.

  <マルチウィンドウ>
  多くの窓があるということ.
  複数のプログラムを同時に実行し,それらの個々のウィンドウとして同時に表示できるようなソフトウェアシステム.または複数のウィンドウを
 同時表示すること.デスクトップを机の上と考えたとき,作業するため机の上に2つの書類を広げ,写真を1枚広げ,メモ帳を1つ広げた.これ
 はパソコン画面の中に4つ画面が出てきたことになる.このように机の上に多数の書類を並べて作業するメタファから,多くのウィンドウを表示
 する(=multiwindow)の外来語である「マルチウィンドウ」と呼ばれている.

 
 ●まとめ

  被験者がつまずいた点で一番の問題が「パソコン用語の意味を理解するのが難しい」である.被験者が生活している場面で使用する用語な
 どについては覚えることが容易に感じ,被験者が生活している場面で使用頻度の低い用語は覚えづらいように感じた.高齢者にとって新しい
 用語は覚えづらいのである.そもそもパソコン用語はメタファが多く取り入れられていて,メタファの用語のほとんどが外来語である.これはパ
 ソコンのメタファは日本向きではなく,そして高齢者向きではないということがわかった.本来メタファは分かりやすいたとえをして,学習の助け
 となり学習を容易にするためのものである.しかしパソコン用語は,その意味すら想像できないものがあるので,高齢者にとってわかりづらい
 言葉が多いと考えられる.また,高齢者は用語の意味を覚えるのではなく,操作に慣れることが重要なのである.そこで,パソコン用語を覚え
 る過程で,現在使われているメタファを一時的に高齢者にとってわかりやすい用語で解説した.「パソコン用語はわかりづらい」,これはパソコ
 ンが使いにくいと感じる理由の一つである.今回作成したメタファの解説本が高齢者にとってわかりやすいものであれば,高齢者にとってパソ
 コンが身近になると考えられる.


 
 ●リンク

 立命館大学

 立命館大学 情報理工学科

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