●研究の概要
   ●研究の背景と目的
   ●入力速度比較評価実験
   ●実験結果
   ●まとめ
   ●リンク




  

     本研究では,デジタルディバイドを解消することを目的とし,標準型キーボードとは異なる
  形状で,年齢,利用環境,利用状況に適した特殊キーボードを選択することにより,コンピュー
  タの操作性が向上するかどうかを評価し,各種キーボードの優劣を検証した.比較評価実験では
  試作したアプリケーションを用いて,一人につき4種類の入力機器(標準型キーボード,Keiboard,
  小型ひらがなキーボード,iuTAP)で各2回ずつ,計8回の計測を行った.また,実験後アンケート
  に協力してもらった.被験者は大学生20名,中高年者17名,高齢者25名の3世代に協力してもらった.

      その結果,年齢によって使いやすいキーボードが大きく異なることが分かった.大学生は標準型
  キーボードが使いやすく,中高年は標準型キーボード,Keiboard,小型ひらがなキーボードに意見
  が別れた.高齢者は小型ひらがなキーボード,Keiboardが使いやすく標準型キーボードが使いにく
  いという結果になった.さらに,高齢者や初心者がパソコンを使いにくいと感じる理由の一つに
  QWERTY配列のキーボードが挙げられることも分かった.デジタルディバイドを解消するためには,
  自分になじむ形の入力機器を積極的に取り入れる必要があるだろう.


   



  
     
     ユーザー端末とし現在,高度情報化社会が進められている.総務省が発表した「平成16年『通
  信利用動向調査』の結果」によると,パソコンの利用率は,全体で50.8%である.しかし,高齢者
  になると,65-69歳では16.7%,70-79歳では6.8%と大きく減少する.パソコンを利用しない主な
  理由としては「必要がない」がもっとも多く,続いて「パソコン等の機器操作が困難」が挙げられ
  る.機器操作のうちキーボードに着目すると,「標準型キーボードはキー配列が分かりにくい」
  「標準キーボードのキーが小さい」などが原因と考えられる.そこで,ユーザに適したキーボード
  を選択することによりユーザビリティを向上させることが本研究の目的である.


       



  
   
   
●評価実験の概要
 
       様々な世代の被験者
       様々な形状の特殊キーボード
       試作したタイピングソフトを用いた各キーボードの入力速度比較実験
       アンケート

     
   ユーザに適したキーボードを評価する

    ●被験者
                                                                            
                
大学生 14名 6名 20名
中高年者 6名 11名 17名
高齢者 11名 14名 25名
合計 31名 31名 62名

    ●キーボード

        〇標準キーボード
               −ローマ字入力/かな文字入力は被験者に任せる

        ○Keiboard
                  −携帯電話と同じ入力方式
               −かな文字入力

        ○小型ひらがなキーボード
               −右から縦に「あ」「い」「う」「え」「お」と並んでいる
               −かな文字入力

        ○iuTAP
               −12個の文字キーでローマ字入力
               −単独の「い」「う」だけが特別な入力


                                
                           Keiboard                      小型ひらがなキーボード                 iuTAP


  ●比較評価プログラム

  キーボードの使いやすさを測る指針として入力速度に着眼した.そこで,Visual Basic6.0で試作した.





  ●実験手順


     1.タイピングソフトでの入力速度比較実験
      各キーボードでそれぞれ2回ずつの入力速度比較実験を行った.
      大学生,中高年者は,標準型キーボード,Keiboard,小型ひらがなキーボード,
      iuTAPの4種類で実験
      高齢者は,標準型キーボード,Keiboard,小型ひらがなキーボードの3種類で実験
         (※予備実験により,iuTAPはローマ字入力により高齢者には使用不可能と判断)

     2.アンケート
      パソコン,携帯電話の使用頻度と各キーボード使用後の感想についてのアンケートを
      実施した





  

     
機種間での世代別平均入力速度比較を示すが,世代によってまったく異なる結果が得られた.
   まず,大学生だが予測どおり標準型キーボードの入力時間がもっとも短く,Keiboard,小型ひらがな
   キーボード,iuTAPと続く.大学生は日常からパソコンに接する機会が多く,またインターネット以
  外にレポート作成での使用が多いため文字入力が頻繁である.そのため,日頃使用している標準型
   キーボードが良い結果となったと考えられる.
     中高年者はKeiboardがもっとも速く,小型ひらがなキーボード,標準型キーボード,iuTAPという
   結果になった.今回協力していただいた中高年者はパソコンよりも携帯電話の使用頻度のほうが高い
   方が多かった.パソコンを利用している方もインターネットの閲覧程度の簡単な操作だけという意見
   が目立った.そのため,標準型キーボードよりも,Keiboardのように慣れている形のものや,小型ひ
   らがなキーボードのように分かりやすい配列のものが速い結果となったと考えられる.
     高齢者は小型ひらがなキーボードの入力時間がもっとも短く,標準型キーボードは大幅に遅いとい
   う大学生とは対照的な結果となった.これはローマ字を使える高齢者が少なく,標準型キーボードで
   キーを探すのに時間がかかるためであると考えられる.



            



  

  本研究を通して,年齢によって使いやすいキーボードが大きく異なることが分かった.大学生は標
  準型キーボードが使いやすく,中高年は標準型キーボード,Keiboard,小型ひらがなキーボードに意
  見が別れた.高齢者は小型ひらがなキーボード,Keiboardが使いやすく標準型キーボードが使いにく
  いという結果になった.高齢者や初心者がパソコンを使いにくいと感じる理由の一つにQWERTY配列の
  キーボードが挙げられるのならば,ユーザになじむ形のキーボードを積極的に取り入れることによっ
  てデジタルディバイドを解消する必要があるだろう.




  

  ●立命館大学

  ●立命館大学 情報理工学部

  ●情報バリアフリー研究室(教員)

   ●情報バリアフリー研究室(学生)




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