結論

本研究は,取扱説明書を分かりやすくするため,取扱説明書の分かりやすさに関する要因を抽出し,その要因の中で,どれが最も分かりやすさに影響を与えているのか分析を行った.それにより,形や大きさなどに制限のある取扱説明書ではどの要因で構成すればよいか,また分かりやすい取扱説明書を作成する上での基準を設けることを目的とする.
 まず,取扱説明書に対してユーザが求める要件について調査し,その要件の中で“分かりやすさ”について,要因抽出を行った.抽出した要因は,“図の有無”,“区別の有無”,“ジャンプの有無”,“専門用語の注釈の有無”,“文字サイズ”である.それらを含めた取扱説明書を作成し,どの要因が最も分かりやすさに影響を与えているかを分析するため評価試験を行った.そこで得たデータを分析して,各要因の影響度を定量的に把握した.
 その結果,若年者は“図の有無”,“文字サイズ”,“ジャンプの有無”,“専門用語の注釈の有無”,“区別の有無”の順に分かりやすさに影響を与えていることが分かった.高齢者については“図の有無”,“ジャンプの有無”,“文字サイズ”,“区別の有無”,“専門用語の注釈の有無”の順に分かりやすさに影響を与えていた.また若年者,高齢者ともに視覚的に捉えられる“図”は分かりやすさに大きく影響を与えていること,高齢者は若年者に比べて“文字の大きさ”と“ジャンプの有無”について,分かりやすさに影響が大きかったことが分かった.
今回は限られた被験者で評価試験を行ったため,要因数を制限することとなった.評価試験した要因は5つであったが,他にも第3章で抽出したように“行間”,“版面率”,“1文に1操作”など様々な要因が考えられる.特に若年者に対しては,今回抽出した5つの要因以外にも最適な要因が考えられるため,今後他の要因も含めた調査が必要である