分析方法


本研究では,取扱説明書の分かりやすさに影響を与える要因を抽出し,どの要因が最も分かりやすさに影響を与えているのか,数量化T類を用いて定量的に把握した.数量化T類とは,統計分析手法の1つであり,重回帰分析の方法を用いている.まず数量化T類を説明する前に,この重回帰分析について説明する.


1、重回帰分析

重回帰分析の目的は,予測と要因分析である.例えば,マンションの価格を築後年数,専有面積,駅からの徒歩分数から予測し,またこの3つの中からどれが一番価格に影響を与えているか分析することができる.
築後年数,専有面積,駅からの徒歩分数のことを説明変数,求めたい価格のことを目的変数といい,重回帰分析で扱う変数は,ともに定量的データである.
この2つの変数の関係式を作ることによって予測と要因分析を行うことができる.この関係式のことを(重)回帰式といい,次のように表す.


Y = w1x1+w2x2+w3x3+・・・+wnxn+e ・・・・・・・・・・・・・・(式3.1)  

Y:目的変数
xi:説明変数
wi:偏回帰係数
e:誤差

式3.1の説明変数に築後年数,専有面積,駅からの徒歩分数,目的変数に価格を用いると
(価格)=w1×(築後年数)+w2×(専有面積)+w3×(駅からの徒歩分数)+e
となる.このw1,w2,w3の値と誤差項eの値を最小2乗法の原理を用いて求める.
求められた式が例えば,
(価格)=−14×(築後年数)+32×(専有面積)+30×(駅からの徒歩分数)−800
という関係式が得られる.この式に説明変数のデータを入れれば,マンションの価格が予測できるというのが重回帰分析の考え方である.
重回帰分析では,求められた重回帰式をもとにして,実測値と理論値との関係を見る.先ほどの例でいうと,マンションの実際の価格が実測値で,築後年数,専有面積,駅からの徒歩分数の3つの説明変数から重回帰式で求めた予測値を理論値という.この2つの値の相関を表すのが重相関係数Rである.したがって,この重相関係数Rが1に近いほど重回帰式の精度が高いということになる.また,この重相関係数Rの2乗を,決定係数(R2)といい,目的変数の分散に占める予測値の分散の割合に一致するので,重回帰式の適合度指標となる.



2、数量化T類

 重回帰分析で扱っていたデータは全て定量的データであったが,数量化T類では,説明変数が定性的データ,目的変数が定量的データである.(表3.1)


                  表3.1

統計手法 被説明変数Y 説明変数X
重回帰分析            定量的データ
数量化T類 定量的データ 定性的データ


定性的データは,ダミーデータ(0,1データ)に置き換え,回帰分析に取り込む.例えば“男性”,“女性”のデータならば,“男性”は1,“女性”は0と置き換える.
数量化T類の目的も重回帰分析と同様,予測と要因分析である.