2003年度 卒業研究

「高齢者向け情報システムに関する基礎的検討」


情報バリアフリー研究室


Contents


研究背景

急速に進む情報化社会
  世界規模で情報通信技術のインフラ整備
  「e-Japan戦略」基づく、電子政府・電子自治体の構築(日本、2001)
    ⇒企業だけでなく、個人の生活もより豊かにすると期待
高齢者のデジタル・デバイド
  銀行などのATMで何度も操作をやり直す高齢者
  役所などの窓口業務の機械化に立ち往生する高齢者
    ⇒高齢者層には、情報技術は浸透していない?
          
高齢者の情報技術利用の促進
  高齢者にこそ情報技術は有効
    ⇒第2の人生に趣味や生きがいを提供
    ⇒過疎地域などで遠隔医療が可能
    ⇒在宅勤務など、社会参加を促進
  
高齢者対応商のハードウェアが続々登場
    ⇒高齢者向けパソコン
    ⇒大型キーボードやマウス

          
高齢者の特徴を調査し、彼らの持つ情報技術に対する壁を取り除くべく、その足掛かりとなるようなソフトウェアを作成する。


研究背景

情報通信技術の利用状況
調査項目 結果
情報通信技術の
利用状況
携帯電話・パソコン・
インターネットの利用率
高齢者にも、徐々に浸透 
情報機器を利用しない理由 必要性を感じない(78.0%)
使い方がわからないので面倒(35.7%) 
若年層や青年層に比べると依然として普及率は低い。
情報技術を、使い方が複雑で必要性のないものと捉えている。
健康問題
調査項目 結果
健康に関する意識調査 心配ごとや悩みごと 自分の健康のこと(33.5%)
配偶者の健康のこと(16.7%) 
医療サービスの利用状況 月に1回より頻度が高い(約75%) 
自分や配偶者などの「健康」が、身近な関心ごと。
往診を含む医療サービスの利用が月1回以上と、頻度が高め。
視覚特性
調査項目 結果
ディスプレイ上に表示された文字について 読みにくい大きさ 10.5pt以下が全体の4割 
読めない大きさ 9pt以下が約33% 
ディスプレイに表示される文字の大きさは14ポイント程度が最適。
9ポイントより小さい文字は見えない。

調査結果より               
お薬手帳シミュレーションソフトを試作


研究背景

お薬手帳
  記載項目と記載者
記載項目 記載者
氏名・性別・生年月日・血液型・連絡先 所持者
アレルギー(食物・薬)歴、副作用歴、既往歴 所持者および医師・歯科医師
処方された薬の名前や飲む量・回数など(薬歴) 処方機関(薬局など)
受診記録 医師・歯科医師
  メリット
   普段利用している以外の病院や診療所、歯科医院にかかったとき、この手帳を医師や歯科医師に見せることで薬の重複を避けることができる
   外出先で事故に遭遇するといった緊急時に、この手帳を携帯することで普段服用している薬やアレルギー歴などがわかり、医療機関による救急救命処置が円滑に行われやすくなる
    手帳の記録をもとに医師や歯科医師、薬剤師間で患者(手帳所持者)に関する情報のやりとりが円 滑に進む
  現状と問題点
   省スペースに複数の情報を掲載するので、文字が小さくなり読みにくい
    ⇒所持者にとって最も重要な薬に関する情報が、一目瞭然とはいかない
    保持できる情報量が少ないため、使用頻度が増せば複数冊所持に
    ⇒過去の薬歴を参照しづらくなる
    処方された薬の効果や服用上の注意点など、患者にとって重要な情報が別配布
    ⇒二度手間

お薬手帳シミュレーションソフト
  薬歴と医療機関の情報を分けて取り扱うことで、見やすさが向上
  扱える情報の量と種類が増えたため、薬効や服用上の注意点などがその場で参照可能
  市販品を含む薬の情報が検索できる(新機能として追加)
  過去の薬歴を一括管理できる
  小型携帯情報端末上での動作が可能なため従来どおり携帯でき、かつ、使用用途が広がる


研究背景

残された課題
薬局などが扱う処方箋データ(薬歴)は一つの個人情報であり、その取り扱いには細心の注意が払われなければならない。
⇒本研究では、実際に薬局などの薬を処方する機関で使用されているデータを用いることができなかったため、お薬手帳に添付されている情報を基に作成した処方箋データを使用
さらに薬局などに協力を求め、実際のデータを用いて本ソフトの動作を検証しなければならない
高齢者を対象にした本ソフトに関する調査等を行い、より多くの意見を反映させていかなければならない。

今後の展望
 高齢者に関する調査から、情報機器を利用しない理由として「高額」があがった。
 ⇒比較的安価で持ち運びしやすいPDA(個人情報携帯端末)での動作

 薬歴およびアレルギー歴などの各履歴をデータとして扱う
 ⇒システム化が進む医療分野において、何らかの相互作用が期待


読めない文字の大きさ


読めない文字の大きさ


読めない文字の大きさ

項目 割合(%)
自分の健康のこと 33.5
配偶者の健康のこと 16.7
生活費など経済的なこと 7.0
病気などのとき、面倒を見てくれる人が居ないこと 5.2
配偶者に先立たれた後の生活のこと 4.9
一人暮らしや孤独になること 3.8
現在住んでいる家の老朽化による修理や建替えのこと 3.1
貯金や不動産などの資金管理のこと 1.9
趣味や生きがいがないこと 0.7
安心して住める家がないこと 0.5
その他 3.3
心配事はない 52.5

読めない文字の大きさ


読めない文字の大きさ

読めない文字の大きさ

読めない文字の大きさ


読めない文字の大きさ

理由 割合(%)
必要性を感じないから 78.0
使い方がわからないので、面倒 35.7
興味はあるが、購入場所、購入方法などがわからない 1.1
使い方を覚えたいが、教えてくれる人がいない 5.0
お金がかかるから 13.7
文字が見にくいから 8.6
その他 3.1